2017/05/25

超低出生体重児の退院後の支援と訴訟リスク 『医療観察法国賠訴訟』を傍聴しに東京地裁へ

●この国の医療では何が起きているのか 傍聴席は8割ほど埋まっていた

昨日の朝思い立って『医療観察法国賠訴訟』の傍聴に出かけることに。


足を運ぼうと思った理由は2つ。


1つは他人事ではないからだ。将来、超低出生体重児が同じように法廷で訴えているかもしれない。被害を訴えている方をこの目で確かめたいと思ったのだ。そしてもう1つの理由は被害者を支援している弁護士さんに一度あってみたいと思ったからだ。


●弁護士は星の数いるけれど この弁護士さんにあってみたい!

今回被害者の支援している弁護士のお一人は、最近いくつかの医療問題で、マスコミに登場した方だ。弁護士は星の数ほどいるけれど行政の姿勢を変えてしまうような人はめったにいない。(個人的に、村中璃子氏の弁護士さんはちょっとありえないと思っている


どんな人なのか興味があった。


東京地裁は、丸の内線の霞ヶ関駅の出口からすぐ。この日は手荷物検査もすぐに終わり、法廷についたのは、裁判がはじまる15分ほど前だった。


中に入るとすでに数名の方が着席していらして、裁判がはじまる頃には、8割がた席が埋まってしまった。当事者とご家族と思われる方々が20名以上も。思ったよりも年配の方々だった。「何時に座り込みをする?」と相談する声がきこえた。皆さんとても一生懸命だった。


日本の精神医療では、何か深刻な事態が起きているのだろう。


裁判は10分程度で終了。エレベーター乗り場で、弁護士さんに声をかけた。挨拶をして名刺をいただいた。


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私は超低出生体重児の母親であることや、今、周産期医療では超低出生体重児の発達の遅れを、発達障害にしようとする流れがあることなどを伝えた。


●2人の医師の異なる評価

先日、友人の医師にメールを送ってなぜ、息子を発達障害だと思わなかったのか尋ねた。友人は幼い頃から息子を知っており、私が相談するたびに発達障害じゃないと言い続けてきたからだ。


するとこんな返事が返ってきた。


「(電車が好きで知識が豊富なことについて)あれだけ電車の知識がまとまって頭の中に入っているということは、他のことでも興味が湧けば能力をはっきすると思います」


●言葉は話せないけれど、大人の会話を理解している

私が発達検診を信用できないと思ったのは、あることがきっかけだった。


NICUで息子を担当して下さった新生児科の主治医は大阪出身だった。NICUを退院して最後に会いに行った時に「もうすぐ大阪に帰るんです」とおっしゃっていた。


当時息子は2歳ぐらいでまだしゃべれなかった。


しかし新生児科の主治医が口にした『大阪』という言葉に反応した。「ウ〜」と言って手足をばたつかせ興奮しはじめた。


その時に、この子は『大阪』が何を意味しているのか、わかっているんじゃないかと思った。


●病院の売店で買った絵本がきっかけ

私には思い当たることがあった。息子が『大阪』という言葉を覚えたのは、国立成育医療研究センターの地下の売店で購入した『しんかんせんのぞみ700だいさくせん』という絵本だろう。


私は息子が病院嫌いにならないように(注射や採血で痛い思いをするから)検診のたびに、地下の売店で絵本を買ってあげた。その頃、文字なんて読めなかったが、この『しんかんせんのぞみ700だいさくせん』の表紙が気に入り本棚から離れない。文字が多いから私は違う絵本をすすめたが「うん」と言ってくれない。仕方なく購入した。



しんかんせんのぞみ700だいさくせん (のりものえほん)しんかんせんのぞみ700だいさくせん (のりものえほん)
(2001/05)
横溝 英一

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それから毎日、毎日、1日に何度も読んで欲しいとせがまれた。


この絵本は、2人の小学生の男の子が、おじいちゃんにもらった切符で、憧れの東海道新幹線に乗るというストーリーだ。幼児向けの絵本とは違い結構長い。(アマゾンのレビューにも「○○系などという表現を使っているので、かなりマニアックで子供には覚えにくいく、読み聞かせる親も少し戸惑ってしまいます」と書いてある)


でも不思議だった。発達検診ではいつも遅れていると言われていたのに、読んであげると集中してきいている。絵本の内容もちゃんと理解しているようだった。


今までたびたびブログに書いてきたけれど、最後の発達検診の時に、積もり積もった不満が爆発して、私はこう言ったのだ。(※ 発達検診医は、新生児科の主治医とは別の医師です)


「いつも遅れがあるというけれど、先生はわかっていますか?この子は言葉が出ないだけで、いろいろなことを理解しているんです。例えば、東海道新幹線のぞみは特別な電車だということ。それだけじゃなく、どこからどこまで走っているのかまでちゃんと知っているんですよ」


すると発達検診医はハッとしたような顔をして沈黙した。私は「やっぱりわかっていなかったんだと」と思い、こう言った。


「この診察室でみせる顔は、この子の日常生活のほんの一コマで、それもよそゆきの姿です。この短い時間の『検診』で何がわかるというのでしょう?それにいつも『遅れている』とおっしゃいますが、遅れているのは3ヶ月程度で『療育』に行くほどではないと言います。じゃあ、どうすればいいかと尋ねると『おはじきをフィルムケースに入れて、つまんで出させる』だけです。そんなことを教えてもらうために、わざわざ半日かけてここに来る理由がわかりません。子どもは自分が疑われていることを敏感に察知しているから、検診に行くのを嫌がるようになりました」


発達検診医は私に何も言い返すことができず、「もう来なくてもいいです」と言ったのだった。


●超低出生体重児の退院後の支援 最悪のケースにも目を向けて欲しい

同じ息子の姿をみていても、友人の医師とは評価がまるで違う。


発達検診だけじゃなく、精神科での診察も同じようなもの思う。だって患者の人生の、ほんの「一コマ」しかわからないもの。
だから、お子さんが摂食障害で悩む友人に、「家庭の問題などは、あまり詳しく話さないほうがいい」とアドバイスしたのだ。


『うつを治したければ医者を疑え! 』と小学生の摂食障害 摂食障害を回復させたもの1


それで人生が大きく決まっていく場合もあるんだから恐ろしい。最近「病院しか知らない医療者が、決めてしまうのは怖いですね」という感想をもらった。その人が言いたいのも、こういうことだと思う。


超低出生体重児の退院後の支援を考えるのなら、専門家だという方々こそ『医療観察法国賠訴訟』のような裁判を一度傍聴したらいいと思う。私は退院後の支援にもリスクヘッジが必要で、最悪のケースをあらかじめ想定し、できるだけ回避しないといけないと思う。


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