2017/07/11

小児がんの晩期合併症と、超低出生体重児の長期予後 病気でも〝子供らしく″生きられる社会に

●ある医師から届いた一通のメール

おとといの10日、朝起きたらある医師からメールが届いた。嬉しいことに「時間があったら、今日、会いませんか?」と書いてあった。


2017-7-12.png

(※ いただいた名刺の裏側に印刷されていた文字)
Care Children,Cure Cancer !
病気でも〝子供らしく″生きられる社会に !



その医師は小児がんの治療に長い間関わっていらした専門家だ。私が超低出生体重児の母親で、小児がんの晩期合併症に関心を持ってきたので、声をかけてくださったようだ。私はブログにクローズアップ現代の小児がんの晩期合併症の特集、『~小児がん 新たなリスク~』 を文字に起こしたぐらいだ。


NHK クローズアップ現代 『~小児がん 新たなリスク~』 その1


とても緊張したけれど、すぐに飛んで行った。どうしても知りたいことがあったからだ。小児がんの治療に関わってきた医師が、晩期合併症に注目するようになったきっかけだ。


大きな子ども病院の入り口で待ち合わせ、院内の小さな個室に案内していただいた。そこで1時間半ぐらい、いろいろなお話をした。とても有意義な時間だった。たくさんのことを教えていただいた。


いつものように会話の内容を記録しておこう。

◇  ◇  ◇

●どうして晩期合併症がわかってきたんですか?

私 
私は小児がんの晩期合併症を、クローズアップ現代で知りました。お笑い芸人を目指していた患者さんが、自ら命を絶ったことを知り3日ぐらい寝込んでしまいました。今はまだわからないだけで、超低出生体重児の長期予後にも同じことがあるんじゃないかと思ったからです。


息子は母体にいなくてはならない時期に、外の世界に出てしまいました。今の医療が素晴らしいから超低出生体重児も大きく育つとメディアは伝えます。多くの親御さんのブログにもそのようなことが綴られています。確かに素晴らしい医療かもしれません。でも普通に生まれたお子さんと全く同じだとは私には思えませんでした。小児がんの晩期合併症のように、合併症が出てくるかもしれないけれど、それよりも気になるのは知能でした。24週というと、脳が成長していく時期だからです。ですから脳に何らかの影響があるんじゃないかとずっと気になってきました。


どうして、小児がんは晩期合併症がわかってきたんですか?



小児がんの専門医 A医師
患者さんが成長して、大人になってきたからです。




私が今お話ししているようなことを医師の前で口にすると、猛烈なバッシングにあいました。「助けてやったのに文句を言うな」という感じで議論にもなりませんでした。



A医師
私たちも初めは受け入れ難いというか、抵抗がありました。がんの治療というものは、基本的に毒を入れて、ギリギリの状態でがんを追い込んでいくようなものです。とにかく、命さえ助ければいいと思ってきました。治療しなければ命が救えないのだから、「治療をしてなんで悪いんだ」という気持ちがあったと思います。


小児がんでも初めの頃は、リスクについて話せば批判されたでしょうね。でも患者さんも成長し大人になりました。中には、大変な思いをしている方がいる。だから医師の認識も徐々に変わっていったのです。僕も最近になって、酷いことをしてきたんだと思うようになりました。




クローズアップ現代では、イギリスのフォローアップが紹介されていました。やはり疫学調査のような長期的な調査は、イギリスが中心なんですか?



A医師
いやイギリスじゃなくて、アメリカだと思います。EBM(evidence-based medicine)というとアメリカでしょう?長い時間をかけてデータを集めていったらわかってきた、という感じじゃないのかな。



●『牧本事件』について 


私は『牧本事件』に興味を持ったので、牧本敦医師が設立に関わったNPOの活動などを調べたんです。私が今、一番心配しているのは、牧本医師が軌道にのせようとした活動の全てが否定されることです。取り組み自体は良かったと思うからです。


どんな病気でもそうだと思いますが、患者や家族の悩みはだいたい同じだと思います。具体的には「金銭的なこと」「仕事のこと」「治療への不安」などですね。子供の場合には「勉強のこと」「進学」などが加わります。小児がんの支援活動が一歩も二歩も前を行っていると感じたのは、水先案内人がいるというか、振り分けがきちんとできているからです。社会的な支援はこっち、就学問題はこっち、金銭的なことはこっち、治療法ならこの医師に相談してくださいね、と迷える人を振り分けてくれるです。それらに加え、「新しい治療法の確立を目指しましょう」という活動まで用意されていることです。


闘病を送る子ども達の人権に関する議論もなされ、とにかく洗練されている活動だと思いました。


牧本先生は、いってみれば、我が国の小児医療の患者支援活動の基礎を作った功労者だと思います。だから「事件」のせいで全てが否定されたら困るな、とずっと思ってきました。



●『牧本事件』の教訓とは 「じゃあ、どうやってお金を集めたらいいのか?」「 臨床研究はお金がないとできないのか?」

私がロビー活動についてブログに書いてきたのは、じゃあ、どうやってお金を集めたらいいのか、と考えてきたからです。


『医療志民の会』について 『がん対策基本法』から『医療志民の会』そして『公費助成運動』『医学部新設推進』へ

『医療崩壊』と『メディア戦略』 世の中を動かすには『ワイドショーに出ないといけない!』その1


●お金をかけなくても、日本だからできる臨床研究があるのでは?

ただ、一方で私は臨床研究はお金がなくても創意工夫でできると思うんです。例えば、超低出生体重児の退院後の支援です。私が育てていて思うのは、小さく生まれ、なんらかの影響はあったけれど、いわゆる「発達障害」とは違うんじゃないかということでした。


全ての発達がゆっくりなお子さんが、発達障害じゃないとは思いません。でも、グレーゾーンの子どもの場合、子どもを制度に合わせることばかり考えないで、ゆっくり学べるように制度を変えていく方法もあると思うんです。なんでそういう意見は出てこないんでしょう?


私は一人で交渉してやってきましたが、個人で働きかけることには限界があります。だから例えば、文科省にお願いして、宿題を減らしてもらう、家庭学習を認めてもらう、あるいは低学年の頃だけでも試験を簡単にしてもらって、成功体験を経験させ、「やればできる」と思えるようにするーーー実際息子はそうやって、幾つものハードルを乗り越えてきました。「文科省に教育の充実を」とお願いしても夫も教員です。文科省も予算がなくて、四苦八苦しているのをよく知っています。




とても大変そうな文部科学省…


超低出生体重児の長期的な予後をみていくと、就学の問題に突き当たります。多くの患者家族の悩みは、ある時点から教育問題になっていくんだと思います。私が持ち続けてきた疑問は、教育の専門家ではない医師が中心となり考えていくのが最善なのかどうか、ということでした。


体の異常にはEBMが必要だと思いますが、子どもの教育にどこまでEBMが必要かどうかという疑問もあります。一口に「勉強ができない」と言っても様々な要因が重なっているでしょう。ですから私は友人の医師がいうように、「(発達)障害」とするのは、最後の手段にした方がいいと思うんです。


そもそもこれまで早期介入・早期支援が良しとされてきましたが、本当にそういえるのか、検証がなされているとは思えません。私のように疑問を口にすると、バッシングされてしまうからです。逆に息子のように早期介入のために嫌な思いをした、あるいは人生の選択が狭まったお子さんもいるんじゃないでしょうか。


そういうことを考え、今まで頑張ってきました。とにかく結果を出していかないことには認めてもらえないからです。

◇  ◇  ◇

先生はウンウンと頷いて聞いてくださった。そして最後に私にある提案をしてくださった。


以前お世話になった新生児科の先生がある大学病院にいる。もしよければ、その先生にあなたの意見を届けてあげるから、文書に書いて出して、と言ってくださった。


「正直な意見を書いたらその先生にまた怒られるかも」と一瞬不安が頭をかすめたが、こんなチャンスは今までなかった。これまで色々な窓口に意見を届けてきた。何かのご縁だと思い、チャレンジすることにした。

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