2014/03/03

小さく生まれた子供を社会でどう支えるか「その8」 虐待防止になるの? 保健師の新生児訪問

小さく生まれた子供を社会でどう支えるか「その7」 二度の救急搬送と赤ちゃんパンダの死因・・・ の続き


【 虐待防止になるのか 保健師の新生児訪問 】


実は、この発作には前兆があった。生後六ヶ月頃から夜泣きが激しくなっていたのだ。私は単なる夜泣きとは違うのではないかとずっと感じていた。


2014-3-3-1.jpg


夜泣きが激しくなった生後六ヶ月頃、ちょうど保健師さんの新生児訪問があった。この訪問事業は虐待防止や育児支援の目的で行っている。育てづらい子どもは虐待を受けるリスクが高いとされているから、超低出生体重児の母親は要注意なのだ。


私は「家まで来てくれるのだから、超低出生体重児についていろいろ知っているだろう」と期待した。「夜泣きについて心配している」と予め電話で伝えた。しかし、「珍しい赤ちゃんを見に来ました」という感じで、「超低出生体重児についてはよく知らないのでアドバイスできない」と言われてしまった。


産まれた病院のソーシャルワーカーと同じように、「たそがれ泣き」についての資料を置いていっただけだった。「赤ちゃんは泣くのが仕事だから心配しなくていい」と言う。


悪くいってしまえば、これではバラマキ型の公共事業と一緒ではないだろうか。一律に支援事業をしても、必要とする支援は人それぞれだ。家庭環境によっても大きく違う。中には、虐待の疑いをかけられ、観察されているようにしか思わない人もいるだろう。二度目に訪問した保健師さんはまさにそういう感じだった。


パソコンで検索すればいくらでも情報が手に入る時代だ。せめて予備知識ぐらいは入れて訪問して欲しい。そうでなければ私のように心を閉ざしてしまう。


私は時として、人の善意ほど恐ろしいものはないと思う。保健師さんが彼女達なりに考えて訪問しているということがわかるから、こちらからは何も言えなくなってしまうのだ。人の善意には、真に困っている人の声を封印してしまうという側面もある。そういったことを支援者にはもっと知って欲しい。
 

この辛い時期に一番励みになったのは、やはり新生児科の主治医だった。息子が救急搬送された時、休日にもかかわらず官舎から私服で小児病棟に駆けつけたのだ。あわてた様子で息子を心から心配していることがわかる。主治医には息子と同じ年の息子さんがいた。せっかくの休みくらいお子さんと一緒に過ごして欲しいと思った。


先生に駆けつけさせたらいけない、子供を元気に育てなくてはと心に誓った。


〜ここまでは2012年にかいた手記。ここから先は今回付け足したもの〜


私がインタビューに答えた時、ネットには医療者からいろいろな意見が書き込まれていた。ほとんどが好意的なものではなかったと記憶している。中には保健師さんのものもあったが「私達、バッサリきられましたね」だった。


もう一度これまで引用した事件や報道の記録をまとめて引用する。記録は残っているから探せばもっとあるはずだ。私は「亡くなった子どもは何も言えないんだよ」と思ってしまう。保健師さんの訪問が「支えになった」「良かった」と答えるお母さんは、そもそも事件を起こさないんじゃないだろうか・・・。

◇  ◇  ◇
2014年2月6日 生後8か月の男児死亡、21歳の母親逮捕 MSNニュース

2014-2-21-1.jpg
おととし、800グラムで産まれた次男が
ミルクを飲んでも泣き止まず
イライラが募っていった
「『心肺停止』という救急隊員の声が聞こえました」

◇  ◇  ◇

【三重】 四日市の乳児虐待に周囲気付かず 状況把握難しく 2014年2月7日 中日新聞

生後八カ月の次男に暴行し、けがを負わせたとして傷害の疑いで四日市市札場町の食品販売員中河加純容疑者(21)が六日に逮捕された事件は、家庭訪問していた市職員も周囲も虐待の兆候に気付かず、育児に悩む母親をケアする難しさを浮き彫りにした。


市は二〇一二年十二月二十日以降、亡くなる二週間前の一三年三月十四日までに計三回、保健師の資格を持つ女性職員が中河容疑者方を訪問していた。訪問はそれぞれ一時間ほどで、中河容疑者から育児の悩みを聞いたり、次男の様子を確認したりしていたが、虐待の疑いはなかったという。


 市担当者は「母親から育児の悩みをもっと引き出せていたら、何か兆候を見つけられたかもしれない」と悔やむ。市は訪問記録を見直し、対応が適切だったか検証する。


中河容疑者の近所の男性(63)は「亡くなる前、赤ちゃんが特別、大きな声で泣いていたという覚えもない」と振り返る。子どもがいる二十代の女性は「上の子を抱いているのを見かけたことはあるが、下の子がいたことは、亡くなったときに救急車が来て初めて知った。近所の若いお母さんの輪にも入っておらず、育児の悩みがあったのかもしれない」と話した。


 八〇〇グラムで生まれた次男は、生後すぐ新生児集中治療室(NICU)に入り、十二月ごろまで入院していた。県子ども虐待対策監の中山恵里子さんは「母親の不安解消という点でも、在宅移行への支援は必要」と語る。


逮捕の数日前に警察からの連絡で知ったという県児童相談センター(津市)と北勢児童相談所(四日市市)は、事件の概要を調査して再発防止に役立てる。センター担当者は「こちらから戸別訪問することはなく、家庭や市役所などからの通報がないと虐待を把握できない」と話す。(佐野周平、井口健太、安藤孝憲)

◇  ◇  ◇


ルポ 児童虐待 (朝日新書)ルポ 児童虐待 (朝日新書)
(2008/07/11)
朝日新聞 大阪本社編集局

商品詳細を見る


第一章「殺人鬼」と呼ばれた夫婦 より一部引用

未熟児の双子を懸命に育てる、いいお母さん

出産から半年後、夫婦は保健師の家庭訪問を受けた。保健師は双子の身長と体重を測り、育児についての考え方を聞いた。「おうちもきれいにしているし、子どもさんもちゃんと育っている。あなたいいお母さんね」保健師が再び訪問することはなかった。

4歳ーー徐々に家に閉じこもり始める

この頃から洋子さんは家に閉じこもりがちになっていく。双子を連れて外に出るたびに「子どもさん、小さいね」と言われることが苦痛だった。佳奈ちゃんと陸君は生まれた頃からミルクをあまり飲まなかった。離乳食がはじまると洋子さんはできるだけ食材を細かくして食べさせようとした。それでも身長、体重はいつも標準以下だった。

・・・

検診や予防接種で病院に行くたびに「食が細くて食べてくれないんです」と医師にも相談した。


「お母さん気にしすぎ。お母さんこんなに元気なんだから心配いりません。小さく生まれてきたんだから、ほかの子と比べちゃだめ」看護師はそういうけれど、洋子さんにとっては深刻な問題だった。


◇  ◇  ◇

2007年4月16日 NHK福祉ネットワーク「超低出生体重児 母親の悩みにどう応えるか?」より一部引用 

かつては生まれてきた命が救えるかどうか危ぶまれたのですが、医学の進歩により、ここ10年ほどで超低出生体重児の約8割が助かるようになりました。


しかし、NICUを出ると超低出生体重児の親には大きな苦労が待ち受けています。思うように進まない成長、いつ病気になるかわからない不安。しかし、一般的な体重の赤ちゃんと違い、超低出生体重児のデータはまだ少なく、医師もこの先どのように成長するか見通しを示す事が出来ません。普通の子どもなら「ささやかなこと」で片付けられることも、「命にかかわること」になるのではと、気の休まるときはありません。


◇  ◇  ◇

2013年5月28日 NHKクローズアップ現代「幼い命を守れ~小児在宅ケア・地域の挑戦~」より一部引用 

新生児医療が進歩すればするほどNICUのベッドは必要とされすぐに埋まってしまう状況が続いています。妊婦と赤ちゃんの命を守るには、NICUに常に空きを保つ必要があります。そのため症状が改善し、自宅での生活が可能になった赤ちゃんは、退院して家族とくらしていくことを目指すことになります。


しかし、こうした子どもが自宅で医療を受けながら暮らしていく取り組みは地域にまだ十分あるとはいえません。NICUを出る時に感じたアンケート調査によると、「家族が一緒に暮らせる」など良かったことをあげた回答より、「不安だらけで孤独でした。これで退院してよいのか」などの声が二倍以上にのぼっています。



>2014-2-4-1.jpg

◇  ◇  ◇

最後に海外のリサーチ会社の報告を掲載する。これまでの日本の医療従事者による調査報告ではなぜか「母親のこころの問題」にされることが多く不思議に思ってきた。どんなサンプルで調査したのかもはっきりしない。


ちなみに息子の産まれた病院からアンケートが送られてきたことがあった。アンケートが記名式だったので「これに正直に答えるだろうか」と疑問に思ったことをよく覚えている。それでも「改善されるなら」と一生懸命回答し、文書もつくって送付した。しかしその後何の音沙汰もなかった。あれは一体何のための調査だったのだろうか。


人のこころなど正確に数値化できないだろうし、それを政策に反映しようとするからますます生きた支援にならないのではないだろうか。事件を起こす母親は簡単にこころを開かないだろう。アンケートに答えるのだろうか。


そういう当たり前のことに専門家は言及しようとしない。もう少し公平で中立で、大規模な調査をしないといけないんじゃないだろうか。

◇  ◇  ◇

早産児の母親において、早産に伴うリスクに関する重要な情報が不足していることが新たな調査で判明- PR TIMES(2012年11月19日09時23分)


[2012年11月15日、東京発] -2012年11月17日の世界早産児デーに際し、乳児の呼吸器感染症の予防について情報を受けている、あるいは探そうとしている早産児の母親は半数に満たないという新たなグローバル調査結果が発表されました。(日本では43%)早産児は呼吸器合併症などの体調悪化のリスクが高まるため、この調査結果は重大です(1)。


本調査は、世界19か国(日本を含む)において、アボットおよびメディミューンの協賛により、リサーチ会社P/S/L Researchにより実施されました。


この結果から、早産に関する情報を受けている早産児の母親の85%(日本では74%)は、早産に伴う合併症の可能性に関する情報を有益だと考えていることが明らかになりました。また、早産児の母親の62%(日本では53%)は、早産児の合併症の可能性についてもっと詳しい情報が欲しいと回答しました。


世界周産期学会会長のザビエル・カルボネール・エストラニー博士は、「早産児は、肺と免疫系の発達が不十分なため、RSウイルス(RSV)などの病気による呼吸器感染症のリスクが高まります。医療従事者は、両親が呼吸器感染症のリスク因子について知っているかを確認することが重要です」と述べています。


調査では、呼吸器感染症のリスク因子に関する知識が調査され、出産時の在胎齢がリスク因子になり得ることを知っている早産児の母親はわずか50%(日本では50%)であり、就学年齢の兄姉がリスクになると考えている母親は41%(日本では23%)にすぎないことがわかりました。また、家族に4人以上の同居者または訪問者があると乳児の呼吸器感染症にとってリスクになると考えている母親は26%(日本では17%)しかいないことも明らかになりました。これらの結果から、早産児の母親を対象に呼吸器のリスク因子に関する意識向上を図る必要があることがわかりました。


国際新生児看護協会(COINN)エグゼクティブ・ディレクター/事務局長のキャロル・ケナー博士(Ph.D.)は、「病院または地域社会で早産児の母親をサポートする医療従事者は、乳児の呼吸器感染症を予防する方法を母親に伝える役割を担っています。医療従事者は、こまめに手を洗い、たばこの煙のない環境を確保し、呼吸器感染症にかかっている可能性のある知人や家族を乳児に近づけないことが重要だと母親に注意を促すことができます」と述べています。


調査ではさらに、重篤な呼吸器感染症は、正期産児の母親よりも早産児の母親に及ぼす影響が大きいことも明らかになりました。昨年、重篤な呼吸器感染症にかかった乳児を持つ母親(早産児の母親n=158、正期産児の母親n=70)のうち、重篤な呼吸器感染症が入院期間に影響があると考えている母親の割合は、正期産児の母親が40%に対し、早産児の母親では57%でした。また、重篤な呼吸器感染症による経済的負担を感じている母親の割合は、正期産児の母親が26%に対し、早産児の母親では47%でした。


グローバルの調査概要

実施会社: リサーチ会社P/S/L Research.
協賛: アボット、メディミューン
実施期間: 2012年6月5日~6月24日
参加国: 19か国

アルゼンチン、ブラジル、カナダ、コロンビア、フランス、ドイツ、香港、ハンガリー、アイルランド、イタリア、メキシコ、オランダ、ロシア、サウジアラビア、韓国、スウェーデン、台湾、日本、アメリカ
調査方法: オンライン、面談、オンラインおよび面談(実施国による)

サンプル数: 計1949

・ 正期産の母親 600
・ 早産児の母親 568
・ 早産児の父親 189
・ 妊婦 592



日本の調査概要
実施会社: リサーチ会社 P/S/L Research.
協賛: アボット、メディミューン
実施期間: 2012 年 6 月 5 日~6 月 23 日
調査方法: オンラインのみ

サンプル数: 計 97

・ 正期産児の母親 30
・ 早産児の母親 30
・ 早産児の父親 9
・ 妊婦 28


世界早産児デーについて

2012 年 11 月 17 日、第 2 回世界早産児デーが開催されます。この記念日は、早産にまつわる健康問題の啓発のため、March of Dimes*、新生児ケアのためのヨーロッパ財団(EFCNI)、LittleBigSouls 国際慈善財団、および全豪早産児財団によって定められました。世界早産児デーは、家族、医療従事者、研究者、そして早産の影響を受けている世界中の人々が、早産という重大な問題について共に啓発活動を行う機会となります。「世界早産児デー」は、深刻化してきている早産という公衆衛生問題への関心を高めることを目的としています。*March of Dimesは新生児の健康向上のため、啓発や支援活動を行うアメリカのNPO法人です。


アボット社について

アボット社(NYSE:ABT)は、広範囲のヘルスケアに基盤を置く世界的規模の会社であり、グループ総従業員数 91,000 人を擁し、世界 130 カ国以上で営業活動を行っています。その事業内容は医療用医薬品、栄養剤、医療機器、診断薬、診断機器の分野における研究・開発、製造、マーケティングそして販売と多岐にわたっています。アボットジャパンのプレスリリースは、www.abbott.co.jp、アボット本社のプレスリリースは、www.abbott.com をご参照ください。

◇  ◇  ◇


続きはこちら↓

小さく生まれた子供を社会でどう支えるか「その9」どうすれば寝てくれるの・・・ 睡眠リズムをつけるためにした努力




コメント

非公開コメント