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『水口病院』のその後 実名報道とジャーナリズム  報道後に変わったこと

●日本経済新聞に『水口病院』の続報が掲載される


警視庁は今年3月、母体保護法に基づく指定医の資格がないのに中絶手術をしたとして、水口病院に勤務していた医師2人を業務上堕胎容疑で書類送検した。


医師ら3人書類送検へ 無資格中絶手術で妊婦死亡 2017.3.30 02:00 産経新聞




あれからどうなったのかが気になっていたら、


昨日、5月25日の日本経済新聞の朝刊に、「中絶 違法な手術なくせ 認識不足背景に 無指定医が執刀・入院設備不備」という見出しで、続報が掲載されていた。


2017-5-26-0.png


こちらはネットで配信されている日経の記事だ。


違法な中絶手術なくせ 医師の認識不足が背景  2017/5/25 0:43日本経済新聞 電子版

法令などに違反した人工妊娠中絶手術が相次いで表面化している。東京都武蔵野市の病院では母体保護法に基づく資格がない医師が22件の手術をしたことが発覚。横浜市の病院は十分な入院設備がないのに手術をしていた。中絶手術に対する医師の認識不足が背景にあり、日本医師会は講習会などで法令順守の徹底を呼びかける。




問題の2人の医師は「院長に指定医の資格があれば自分もしていいと思った」と説明したため、捜査幹部が「産婦人科医にもかかわらず、母体保護法に対する理解が乏しすぎる」とあきれているそう。それもそのはずで、2人の医師が行った違法手術は、2016年5月から9月までの4ヶ月間だけで22件に上るという。


争点になっている母体保護法は


「中絶について、経済的な理由などで妊娠の継続や出産が困難な場合に限って求められるという規定。担当医は地元医師会から指定を得るよう義務付けている。医療事故や安易な理由で中絶の横行を防ぐ狙い」




で定められているそうだ。


ただ、全国にいる約1万人の産婦人科医のうち、中絶手術ができる指定医は全体の66%にとどまるという。産婦人科医が指定医をとらない理由は、「中絶手術をしたくないから」が最も多いそう。マスコミを通じて伝わってくる、水口病院側の主張と食い違う気がする。医療崩壊や産科医が激務であることなどとは、あまり関係がないようだから。


●水口病院の問題に関心を持ったきっかけは、医療ジャーナリスト熊田梨恵氏の取材を受けたから

ところで、私がこの問題に関心を持ったのは、何度か触れたように、医療ジャーナリストの熊田梨恵氏の取材を受けたからだった。


取材後、熊田氏と何度かやり取りをしていくうちに、なんとなく彼女の姿勢に疑問を持ったのだ。ネットで熊田氏の過去の仕事を調べてみると一枚の写真がヒットした。熊田氏と水口病院の理事長代行が2人で映る写真だ。どうやら熊田氏はかつて水口病院の広報として働いていたらしい…。


『水口病院』報道とあるジャーナリストの名刺に記載された肩書きと住所の謎 




●問題の本質は『命に関わる手術は、ルールを守らないといけない』ではないのか?

しかしこの時は、これ以上のことは私にはわからなかった。


大きく動いたのは昨年12月6日。


当初はご遺族に同情する声が多くきかれたが、水口病院から抗議声明が出されると空気が一変。ご遺族や報道に対するバッシングが増えていった。


バッシングが続く中で、私の心が痛んだのは、ごく親しい人しか知り得ない情報がネットで拡散された時だった。ご遺族の訴えには、反発もつきものだし予想はしていたけれど…、正直「ここまでされないといけないの?」といたたまれなかった。


水口病院のウェブサイト ドメイン登録者の謎




ただ私が考えるこの問題の本質は、報道のあり方などではなく、日経のタイトルにある「(医療側の)認識不足」だと思う。「産科の医療崩壊が加速するから」で思考停止したらいけないだろう。命に関わるルールを守らないのはやはりおかしいと思うからだ。


まして、亡くなった女性の個人的な事情を持ち出してまで、遺族側にも問題があるんだとバッシングする人たちにはついていけなかった。命に向き合うには「ならぬことはならぬ」という厳しさだって必要だと思うからだ。


●『水口病院』の報道後に変わったこと 『東京都が定期的に立ち入り検査を開始』『日本医師会は講習会などで法令順守の徹底を呼びかけ』

だから昨日、日経新聞を最後まで読んで、私は嬉しくなった。


なぜなら、東京都が定期的に立ち入り検査をはじめことだけでなく、


水口病院の事件を受け東京都は、都内の病院に対する定期的な立ち入り検査で、中絶をした医師が資格を持っているか確認を始めた 

出典 2017年5月25日の日本経済新聞の朝刊 「中絶 違法な手術なくせ 認識不足背景に 無指定医が執刀・入院設備不備」




日本医師会も「母体保護法検討委員会」を設置し、法令遵守の徹底を指導したと書いてあったからだ。


医師会が対策

日本医師会は今年2月、「母体保護法検討委員会」を設置。全ての産婦人科医が指定医の資格を取るよう促す通知を早ければ6月に出す。指定医向けの講習会でも法令遵守の徹底を改めて指導するという。同会の今村定臣・常任理事は「女性や胎児の命を扱う自覚をしっかり持つよう促したい」と話している。

出典 2017年5月25日の日本経済新聞の朝刊 「中絶 違法な手術なくせ 認識不足背景に 無指定医が執刀・入院設備不備」




●実名報道とジャーナリズム 何のためにあるのか?

遺族が望むことは、医師を罰することではなく、死に意味を持たせることだと思う。


水口病院に関する一連の報道では、記者会見をしたご遺族が批判の矢面に立たされているが、はじめに内部告発したのはご遺族ではないはずだ。


なぜなら『とくダネ!』に出演した伊藤隼也氏が、初めて内部告発があったのは10年ほど前でそれからずっと取材を継続してきた、東京都も問題を把握していた、と言っていたからだ。


つまりもしもご遺族が立ち上がり、社会にこの問題を投げかけなければ改善されなかった可能性が高い。


以前書いたように私は熊田氏の『救児の人々』という本から、自分の章を削除してもらうかギリギリまで悩んだ。削除となると、出版社に負担がかかるからだ。


医療情報誌『集中』出版の不思議 その7 真実が知りたい ワクチンのプロモーションと『牧本事件』




どんな説明でもいいから、私は受け入れるつもりだった。熊田氏にはとにかく利益相反や、実名報道した理由などを説明して欲しかった。様々な批判に立ち向かいつつ、自身の主張を貫くのが「ジャーナリスト」だと思うからだ。


でも残念ながら、最後まで説明はなかった。


私はもしも熊田氏の本の出版に協力しなければ、実名報道について深く考えなかっただろう。


私が実名報道に応じたのは、超低出生体重児の教育問題を改善して欲しかったからだ。ところが本がネットで無料公開されると、医療者に猛バッシングされ、私の声はかき消されていった。熊田氏が私の実名をわざわざ出したのは、社会的インパクトを与えるためじゃないかと今もどこかで思っている。


だから今回の伊藤隼也氏の報道を見て、熊田氏とは違うと思った。伊藤氏は、どんなに叩かれても遺族と内部告発者を守るからだ。


『下町ロケット〜ガウディ編〜』に登場する医療ジャーナリスト『咲間倫子』のモデルは、伊藤隼也氏だと言われています

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出展 下町ロケット 第10話 TBS FREE オンデマンド

「編集長、正しいことを声にできなくなったら、私達は何のためにいるんですか!訴訟が怖くて、ジャーナリストなんてやってられません!」

週刊ポスト編集長

2015-12-23-12.jpg
出展 下町ロケット 第10話 TBS FREE オンデマンド

「わかった。好きにしろ。ケツは俺が持つ!」




私はバッシングされるんだったら、やっぱり世の中が良い方へ変わって欲しい。報道やジャーナリズムって、ただ事実を伝えるんじゃなく、社会を良くするためにあるんだと思っているから。


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2002年に手のひらにのるほど小さな男の子を出産しました。それから11年。医療と教育がもっと連携できないか試行錯誤してきました。コマーシャリズムとどう付き合うか悩み、一時挫折。もう一度がんばってみようと思うようになり、ブログをはじめました。

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